或いは「クソレンズは如何にして復活したか?」


 前世紀の1999年4月24日にM42マウント版の新品を購入した。それ以前に入手したニコンFマウント版のCOSINA MACRO 100mm F3.5が想像よりはるかに良かったので遊び用に手に入れたのだ。当時は散歩カメラはペンタックスSPだったように記憶している。なおコシナレンズは全て中野のフジヤカメラで買っている。

 で、このレンズなのだが当時のメモに拠れば「周辺の流れがひどくF22まで絞っても改善されない。近距離の方が画質がよい」とかなりイラついた記述が残っている。筆者は当時ラボ屋にも勤務していたのでモノクロで自分で伸ばしていたが、ネガを見ただけで投げたようでプリントが残っていない。その活躍期間は一週間程度か(^^; もちろん不人気レンズなので売却もままならずレンズ倉庫の肥やしとなってキレイに忘れ去られた。そして筆者は数年後に突如として写真業界から足を洗い、しかも自身の写真自体を止めてしまったので永久に日の目を見ない筈だった。

 それが今年に入って興味本位でDSLRを買って、付けるレンズが無いのでフィルム時代のを掘り出し始めたのである。何しろ全盛期よりかなり減ったとはいえまだ数百本のレンズがある。これが1/10でもデジタルで使えれば言う事は無い。特にKマウントとM42は直付けできるので尚更良い。後者は散歩カメラだったSPの為にソコソコ買っていたので楽しみは大きいのだ。その時掘り出されたのがこの一度は捨てたコシナ広角レンズなのである。ちなみに24㎜F2.8もこれと同時に買ったのだが、これはもう一台の散歩カメラだったOM-1用にOMマウントを買っていた。今となってはこれもM42かKだったらよかったのにと思う。更に付け加えれば最後の散歩カメラはKマウントのXR-7MIIだった。最初の散歩カメラだったSPは売却してもう無いけど、その次のOM-1と最後のXR7-MIIはまだ持っている。


★このレンズの特徴・欠点
 これはもう十数年前のフィルム時代に既に結論が出ている。

①近接能力はソコソコ高い
 短焦点は繰り出し量に余裕があるのでこのレンズも20㎝まで寄れる。

②比較的小型軽量
 ニコポンUD20㎜やミール47kの事を思えばこれなんて涙が出るほど小型軽量だ(^^;

③近接時の中央部の画質は開放から使える
 どちらかというと解像度よりコントラストに振っている感じで、当時としては新しい指向(MTF評価)の設計だったと思う。

④がしかし、遠景は良くない
 使ってみた感じでは近距離の方が良い絵になった。が、これはもしかすると⑦で書いた無限遠が滅茶苦茶なのが影響しているのかも。極端に言えば日の丸構図でアップだけ撮るしかないレンズだった。だから使われなくなったのだと思う。ちなみに24㎜も酷いのだがそれは別の機会に。

⑤周辺画質が酷い(^^;
 具体的に言うと四隅が流れまくる。F16~F22まで絞っても僅かに残るくらいだ。倍率色収差も大きく、モノクロでのピントの悪さはこれも影響していたかもしれない。これは今回確認されるかもしれない。

⑥歪曲はズーム並み
 コシナの超広角ズームよりはだいぶマシかもしれないけど(^^;

⑦製造品質が極めて悪い
 製造のバラつきは世間の噂通りかなり酷い。最初に買った物は無限が出なかったので交換してもらったが、その交換品(現用のモノ)は逆にかなりのオーバーインフである。オーバーの場合はピントリングで何とかなるのでもう交換するのは止めた。いちいち中野まで出向くのが面倒だったからだ。ちなみに説明の為にネガとプリントを持って行ったが、店員は「またか」という感じでアッサリと交換してくれた。それだけ普通の話だったのだろう。OMマウントの24㎜も交換しているがそれはまたいずれ。


★デジタルで蘇るコシナ
 で今回デジタル時代に使ってみたわけだが、これが驚くほど良かったので参った。元々の予想ハードルが極度に低いという事もあるが、予想を大幅に覆すくらいの画質だったのである。これは恐らくカメラが*ist Dsだからだ。つまりこのレンズの最大の欠点であった四隅の悪さが全部消えてしまうのだ。真ん中だけなら昔からそんなにヒドイわけではなかったのだ。


cosina20_1
 まずはいつものように画角チェックから。書き忘れたがM42マウントアダプタは純正Sマウントアダプタである。このレンズはAUTO絞りしかないので開放でしか使えない。なのでどんな無茶苦茶な画像になるか戦々恐々としていたのだが全く問題が無い。それどころか開放でここまでやれればむしろ良い方なのではないか?フィルム時代にありがちな球面収差の過剰補正によるハロも無い。完全補正なのか?だとするとかつて絞って改善されなかった理由もそれで納得できる。となるとピント移動も大きいのだろう。現状では絞れないから予想に過ぎないが(^^; ピントはオーバーインフなので少々苦労した。この場合ちょっと前ピンになってしまったかも。FIは広角の遠距離では使い物にならないし、かといって画像を見て合わせるのも難儀だ。今後のテストではマグニファイヤーを用意しなくてはいけないかもしれない。尤も本格的な広角のテストはαでやるつもりなのでそれほど急ぐわけでもない。


cosina20_2
 今日も都立東伏見演習場(笑)でテストした。ここなら1000㎜級の大砲をぶっ放しても大丈夫だ。但し(一連の写真では意図的に避けたが)人は常時それなりに多いのでおかしな真似をするとすぐに通報されるだろう。何しろその辺の女の子の写真を撮っただけで変質者として警察に引っ張られる時代である。因みに何でこの案内板の写真を撮ったか?もちろん解像力チェックのために写したんだよ(^^


cosina20_3
 中央部の案内板を等倍でチェックしてみる。御覧のように小さな文字はあまり解像していない。何とか判別は出来るけど。尤もこれは35㎜フルサイズの超広角20㎜という事を考慮する必要がある。フルサイズのレンズならニコンやキヤノンの20㎜だってそんなにバシバシ解像するわけではない。勿論カメラの解像度も考慮しなくてはいけない。感覚的にはまだレンズの限界は出ていないと思う。フィルターが良い初代*ist Dだと解像するか?


cosina20_4
 解像力は高くないというかハッキリ言って低いが、コントラストが良いので見かけ上はシャープに見える。サービス版程度のプリントだと見栄えがするだろう。このレンズのユーザーは確実にシロートなのでその狙いはメーカー的には悪くない。四つまで伸ばさないと写真じゃないという筆者に酷評された理由もここにある(^^


cosina20_5
 バックの人々を捨てて手前の木の辺りにピントを置いてみた。開放だと20㎜でも歴然とピントの差が出るのだ。遠景はボケているが木の葉の描写は捨てたものではない。新品で一万円もしない超広角20㎜レンズの開放の描写には見えない。ま、端の悪いところが捨てられているからだが…(^^;


cosina20_6
 先日の記事で書いた通りタムロン40Aと同時にテストしている。同じ鉄塔(カラ巣^^)を写してみたが特に問題は無い。開放だが周辺光量も気になるほどではない。尤も筆者は周辺光量を気にしたことは殆ど無いが。とにかく開放でここまでやれれば言う事は無い。今回の撮影では歪曲も気にならなかった。これも真ん中しか使っていないからだろう。


cosina20_7
 完璧に逆光だが光が弱いのでゴーストは出ていない。電車や古レールを使用した柵の描写はなかなかのものだが左の金網に解像度の低さの影響が出ている。一度でも気になってしまうともう見てられない。このような被写体は避けた方が良いな(^^;


cosina20_8
 近接撮影だ。これも全く問題が無いが、ボケは非点隔差によるものか渦を巻いたような感じである。これは場合によっては気になるだろう。コマ収差は点光源を写さないとハッキリとは分からないな。


 フィルム時代の経験があったし、開放だからもっとヒドイと思っていたのに四隅まで全く破綻が無いのには驚いた。コシナの広角は(28㎜以外は)四隅の流れが特徴なのだが、このフォーマットだと流れは全く確認できない。インターネット上では「良い」という記述は見た事は無いが、少なくともAPS-Cフォーマットで6切程度のプリントならば問題無しとしておこう。35㎜フルサイズは…今はテストできないけどαが来たらやってみるよ。それまで評価は保留にしておく。周辺の点光源の形も見たいので夜景のテストもしたいが、近所に適当な被写体が無いので保留になっている。近距離だけなら室内でもテストできるんだけどね。

=撮影データ=
①ISO200、F3.8、1/1250
②ISO200、F3.8、1/800
④ISO200、F3.8、1/2000
⑤ISO200、F3.8、1/800
⑥ISO200、F3.8、1/1600
⑦ISO200、F3.8、1/800
⑧ISO200、F3.8、1/100


★色収差
 今回のテスト結果は思った以上に良かったが超広角らしく倍率色収差は大きい。しかしデジタルカメラではソフトウェアでどうにでもなる。


iro_mihosei
 これはCOSINA 20㎜ F3.8で未補正撮ったきりの画像である。倍率色収差は通常周辺部の白色またはそれに近い色のエッジがよく目立つ。御覧のように手すり部分にハッキリと色収差が出ている。これはモノクロではエッジの曖昧さになって表れるのだ。


iro_hosei
 これは筆者がRAW現像(@PPL)した画像だが、左の手すり部分を見てもらいたい。デジタル補正により色滲みがスッキリ無くなっている。デジタル画像ならならこのように倍率の色や歪曲(陣笠はダメかも知れない)は消せるので致命的な欠点にはならない。色収差や歪曲で著しく評価を下げていたレンズはデジタルカメラで復権する可能性がある。ペンタのアレとか例のズームとか期待できるかも(^^

 いずれにせよ大伸ばしをしない人には全く関係ない話だが。他所のレンズについて薀蓄書いているブログの写真の多くがVGA、大きくてもXGAサイズ程度なので失望する。その程度のサイズなら100円ジャンクの曇り玉も至宝名玉も殆ど違いは出ないよ。